中門博先生の作品が入荷しました

輪島塗伝統工芸士の中門博さんの作品が入荷しました。能登半島地震直後、いち早く輪島塗の仕事を再開されたのは中門先生だと思います。勿論、先生の工房やご自宅にとても大きな被害を受けられましたが、幸いにもなんとか仕事が出来る状況だったとお聞きしています。

 

中門先生とのお付き合いはもうかれこれ20年近くになるでしょうか。過去にも何度となく先生の作品展を開催させていただいておりますが、記憶に一番新しいのは2023年の5月に当店2階「うるおいギャラリー」にて先生の新作「パールブルー」の個展を開催させていただきました。

 

 

中門先生と奥様睦子様のツーショット写真と、その時の様子のお写真がこちらです。当店の二階もこの時はまだ健在でしたが、今はもう跡形もなくなっているのが残念です。

 

「能登の海展」と題した個展では、能登の海を表現した新作パールブルーを中心に、能登の四季を色彩豊かにイメージしたクラウド等約70点もの作品を展示させていただきました。中でもパールブルーは一度見たら虜になる魅力ある作品で、期間中には何度も足を運ばれたお客様もいらっしゃいました。この作品のどこに魅力があるのか少し掘り下げてみたいと思います。

輪島塗の特徴について

輪島塗の大きな特徴として、輪島の地の粉が使用されているということです。地の粉とは輪島付近の小峰山から出る粘土を焼いて作ったもので、それを輪島塗の下地に用いることで輪島塗が丈夫だといわれる大きな要素の一つとなっています。

 

その他に、木地の外側や損傷しやすい箇所に漆で麻布を貼る布着せの技法も輪島塗ならではの工程です。特に、輪島塗は他産地には類を見ない丁寧な塗りが魅力のひとつで、塗り上げるまでに20工程以上、総手数では75~124回にも及ぶ丁寧な手作業で作られています。

 

漆器には日本全国に沢山の漆器が存在しますが、輪島塗はその中でも手間もコストもかかる本堅地で統一したことでブランドとしての価値を高め、安価に作ることに重きを置かず技術を守ってきたのが輪島塗の大きな特徴です。

能登の海を表現したパールブルー

輪島塗と言えば、お色は黒か赤を想像する方が多いと思いますが、このパールブルーの作品をご覧になった方は「これは輪島塗ですか?」とか「これは陶器ですか?」とたずねられますが、正真正銘輪島塗の作品です。漆の中でも珍しいこの斬新な色のパールーブルーを作品として作っていらっしゃる塗師塗職人さんは少ないと思います。

 

中門先生が仰るには、この色は能登の限りなく美しい海を表現した作品だとのこと。特にブルーの色漆と黒の漆とのグラデーションは、色漆の第一人者とも言われている中門先生のが得意とされている技法です。

 

このグラデーションは、轆轤(ろくろ)を回しながら塗るのですが、下にはパールブルーの色漆を塗はじめ、次に黒い漆を上から下へと塗り進め、その後その境界線をなじませるように筆を振りながら塗る光景はまるでマジックを見ているようで、驚くほどに綺麗なぼかしが出来上がります。このぼかし塗りこそが人を引き付ける魅力の一つだと考えています。

臼の形のウスマグ

次にご説明させていただくのはカップのデザインです。多くの作品のデザインは奥様の睦子様が担当されています。こちらの商品名は「ウスマグ」といいます。そうです、お餅をつくときに使う杵と臼のうすの形をしているので、そのまま商品名とされているのだと思いますが、手にする中央部分がなだらかにくびれ、兎に角手にしっくりとなじむ形状になっています。

また、輪島塗は見た目の艶やかさだけではなく、均一に何層にも塗り上げた漆の層からは職人魂が伝わります。このようにして生み出された中門先生のパールブルーの作品が昨年、日本からのお土産としてアメリカの元大統領であったバイデンさんに贈られたました。そのことがきっかけで、瞬く間に注目を浴びることとなったこのパールブルーの作品は、今や入手困難な商品となりました。

 

しかし、この度ようやくこちらのカップ&ソーサーが当店にも入荷しました。やはり、存在感があり他の輪島塗とは一味違った世界観がありますね。数には限りがございますので、もしこの記事をご覧になりご興味がございましたら是非 お問い合わせホーム または、お電話(0767-52-4141)にてお問合せいたいただけたなら幸いです。中門先生の作品おは こちらから ご覧いただけます。

 

たったひとつの輪島塗を手に入れただけで、食卓の風景は勿論ですが、毎日の暮らしまでもが驚くほど豊かに変わっていくはずです。

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