震災から立ち上がる工芸のチカラ
一本杉通りと、漆陶舗あらきのこれから

震災直後の一本杉通り
震災発生から2年と1か月が経ちましたが、地震の日のことは今でもはっきりと覚えています。いつも見慣れていた一本杉通りの景色が変わり、当たり前だと思っていた日常が、急に遠くなってしまいました。
漆陶舗あらきの店内も大きな被害を受け、「またここで店を開けるのだろうか」正直、そんな不安な気持ちでいっぱいの日々が続きました。それでも、少しずつ前を向けるようになったのは、多くの方から寄せていただいた温かなお声や、作り手の皆さんの変わらぬ想いがあったからです。
「待っていてくれる人がいるから」

輪島塗伝統工芸士 中門博氏の作品はこちらから
輪島塗や九谷焼の職人さんたちも、それぞれ厳しい状況の中にいらっしゃいました。工房が使えなくなった方、道具を失った方も少なくありません。それでも、「全部はできなくても、少しずつなら」「また作品を届けられる日を信じて」そう言って、制作を続けてくださった姿に、何度も胸が熱くなりました。
器や作品は、ただ飾るものではなく、使ってくださる方がいてこそ完成するもの。そのことを、改めて教えてもらった気がします。
一本杉通りで、またお会いできるように

令和7年11月1日 1年10か月振りに一本杉通りにて再建
一本杉通りは、私にとって特別な場所です。観光地としてだけでなく、地元の方の暮らしがあり、昔から変わらない人の行き来がある通り。新しい店舗を考えるとき、「以前と同じ形に戻すこと」よりも、これからの一本杉通りに寄り添える店でありたいと思いました。
初めて漆器に触れる方にも、「きれい」「使ってみたい」そう感じていただけるような空間。そして、作り手の想いや、器が生まれるまでの時間も、そっと伝えられる場所にしたいと考えています。
はじめての方でも楽しめる絵付け体験(沈金体験)

店内で開催している沈金体験の様子
漆陶舗あらきでは、輪島塗の技法のひとつ「沈金(ちんきん)」を、どなたでも気軽に体験していただける絵付け体験を行っています。
沈金とは、漆で仕上げた器の表面に細い線を彫り、そこに金粉を施して文様を描く、輪島塗ならではの伝統技法です。
「難しそう」と思われる方もいらっしゃいますが、実際には下絵をご用意し、道具の使い方も丁寧にお伝えしますので、初めての方でも安心して楽しんでいただけます。
旅の思い出に。大切な方への贈りものに。そして、ものづくりの時間をゆっくり味わいたい方にもおすすめです。
一本杉通りを散策する途中、「少し体験してみようかな」そんな気持ちで立ち寄っていただける、やさしい体験の場を目指しています。
完成した作品は、そのままお持ち帰りいただけます。世界にひとつだけの輪島塗を、ぜひご自身の手で仕上げてみてください。
沈金体験についてとご予約はこちらから▷▷▷
器とともに、これからの時間と

漆陶舗あらき女将 新城礼子
震災は、たくさんのものを奪いました。でも同時に、「何を大切にしていきたいのか」「誰と、どんな時間を重ねていきたいのか」そんなことを考えるきっかけにもなりました。漆器は、使い込むほどに表情が変わり、暮らしに自然となじんでいきます。ご家族の思い出や、何気ない日常と一緒に、長く寄り添ってくれる存在です。
これからも漆陶舗あらきは、ここ一本杉通りで、石川の工芸とともに、皆さまをお迎えしていきたいと思っています。またこの場所で、器を通してお会いできる日を、心より楽しみにしております。
